こんにちは。価格は他と比べて検討しやすいけど【マンションの地下住戸って実際どうなの…?】と思われている方もいらっしゃると思います。
- 「暗いんじゃないか…」
- 「湿気が多いんじゃないか…」
- 「浸水する恐れがあるんじゃないか…」
など、そこで一級建築士として地下住戸あり分譲マンション3棟を設計・監理した経験から感じた地下住戸のメリットデメリットを解説していきたいと思います。
前提として資産性を求める方には地下住戸は不向きです。しかし、買い替えを考えていない。ずっと住むことを決めて物件を探している人には良い選択だと思っております。これらを念頭に具体的なポイントを見ていきましょう。
地下住戸のメリットとデメリット
では、さっそく地下住戸の特徴を確認してみよう!
- 湿気が多い
- 行燈部屋が多くなる
- 水害リスクが高くなる
- 虫リスクが高くなる
- 再販する場合、希望価格に届かない場合が高い
- 上から物が落下してくる
- メンテナンスの為、業者の立ち入り検査がある
- 販売価格が他と比べて安い
- 地上部に比べて静かな空間
- 下階に住戸がないので騒音を気にしなくて良い
- テラスとドライエリアがある
- 意外と明るいドライエリア空間
- 共用廊下にエアコンがある場合が多い
デメリットについて
デメリットの項目から確認していきましょう。
1.湿気が多い
地下住戸を選ぶ際の一番大きな懸念事項だと思います。「湿気が多い」問題ですね。こちらについては上階の住戸より条件が悪いのはどうしようもありません。しかし、その中でもしっかりと見ていきたいのは湿気対策として【どのような対策】が行われているかどうかです。具体的な内容を見ていきましょう。
孔内水位(こうないすいい)が高いかどうか
孔内水位が高いかどうかは、販売員さんに確認してみましょう。建物を設計する際に地盤調査を行います。その際に【こうないすいい】と言って地盤面からどれだけ深くなったところに水面があるかどうかを調査しております。(海水浴場で砂を掘っていくと水が出てくるあれです。)この水位の高さが住戸のスラブレベルより高いのか低いのかが大変重要になってきます。水位がスラブレベルより高い場合、プールの中に住戸がある状態となってしまうため、湿気の影響を受ける可能性が非常に高くなってしまいますのでしっかり確認することをおすすめします。通常、大手デベロッパーは水位がスラブより高いと地下住戸を作ってはダメと規定があります。
ドライエリアが設置されている
ドライエリアは地下住戸である場合ついてきます。建物規模等により条例で奥行きが2m・3m・4mと違ってきます。通常大きくしたくないので最低限の大きさにするのが一般的です。ここで確認しておきたいのが、ドライエリアの範囲です。基本的に主開口のLDにはドライエリアを設置しますが、洋室側にもドライエリアが来ているかどうか?
ここがポイントとなってきます。分譲マンションは住戸を作って販売し儲ける仕組みなので、どうしても敷地ギリギリまで住戸が来てしまいます。つまりドライエリアを設置する余裕がなくなってしまいます。ですのでドライエリアがしっかりと設置されている物件は地下住戸としてグレードが高いと考えて良いと思います。
二重壁が設置されている
上記のドライエリアが確保できない場合どうするか?なのですが、回答としては二重壁を設置するということになります。こちらは住戸の躯体壁を直接仕上げと接してしまうと湿気による影響を受けてしまうので【緩衝地帯】を設けましょうという作戦です。こちらのデメリットとしては、壁に二重壁の中を確認する用の点検口が設置されることです。
その他、注意する項目
- 定期的にテラスの雨桝を清掃しよう
こちらは当然なのですが、雨桝に落ち葉で覆われてしまうと水が流れなくなってしまいます。最悪、地下住戸内に水がきますので定期的にお掃除する必要があります。 - 中古物件ならドライエリアに亀裂が入っていないか確認しよう
ドライエリアの壁はコンクリート造となっております。当然、経年変化で亀裂等が入ってしまいますが、あまりにも大きな亀裂が入っていたり、亀裂から水が染みて出ている場合は注意が必要です。 - ピット部分との境に断熱材がしっかり入っているか確認しよう
新築マンションであれば、間違いなく住戸とスラブの間に断熱材が入っていますが、中古物件の場合どのような状態なのかしっかり確認しておきましょう。断熱材がない場合は選ばないようにしましょう。
2.行燈部屋(あんどん部屋)になってしまう可能性が高い
行燈部屋とは窓のない居室のことです。地下住戸の弱点の一つになってしまうのがこの行燈部屋です。ドライエリアが住戸をしっかりとカバーしていれば洋室にも窓を設けることができますがなかなか設けれないのが実状だと思います。
ここで豆知識ですが地下住戸の場合、部屋をある一定のドライエリアや空調設備を設けることにより居室扱いすることが建築基準法上できます。上階の居室だと採光等を確保しないとサービスルームになってしまいますが、地下住戸の場合それがありません。不思議ですが考え方が違いますので注意が必要です。極論を言いますと窓がなくでも地下住戸の場合は居室扱いとなります。
3.水害リスクが高くなる
地下住戸の代表的デメリットの大きな点です。水害リスクについて確認しておきたいことを以下にまとめます。
ハザードマップを確認しよう
役所ホームページを調べてみましょう。行政がハザードマップを公表しております。こちらについては大きく以下の3項目によるマップが出ています。
- 内水(大雨)ハザードマップ
- 外水(河川氾濫)ハザードマップ
- 高潮ハザードマップ
- 該当した場合は浸水高さが何mの想定なのかを把握しましょう。
- 敷地がどのエリアに属しているか確認しましょう。
- 該当するから駄目と判断してしまうのはやめましょう。
- 種類によっては周囲の状況や建物側での浸水対策がしっかり取れているかどうか確認していきましょう。
【内水(大雨)ハザードマップに該当する場合】
ハザードマップはコンピューターが計算して導き出した結果なので、ここの敷地はハザードマップに入らないだろうと思っていても該当している場合が実際やっているとあります。その結果を変えることはできませんので諦めるしかございませんが、浸水レベルが50センチ程度であれば建物側の対策で対応できますのでどのような対策が行われているか確認してみましょう。主な対策としては防潮板や土嚢(どのう)の設置があります。
【外水・高潮ハザードマップに該当する場合】
建物側での対策では、どうしようもないレベルの深さまで到達する想定になっていると思いますので、迷わず避難することを考えて計画を立てておきましょう。
敷地の地盤が周囲と比べて高いのか低いのか確認しよう
計画地が周辺と比べて地盤レベルが高いのか低いのかこちらも重要な確認項目になってきます。当然、周囲の敷地より低い位置に建物がある場合、水害を受けるリスクが高くなります。国土地理院のHPを調べると周囲との関係が分かりますので確認してみましょう。また、実際の現地を訪れて現地を見てみましょう。
過去の冠水履歴がないか確認しよう
過去に周辺にて冠水がなかったかどうかは役所の情報コーナーに行って確認してみましょう。通常、この手の情報はネットに掲載されておりません。情報コーナーで閲覧することができるのみになっております。また、内容として詳細な場所、詳細な被害状況は分かりません。過去に冠水した履歴が周辺であったかどうかが分かる程度です。しかし、数が多いのか少ないのか傾向がわかりますので気になる方は確認しておきましょう。
こまめな雨桝の清掃をしよう
地下住戸を水害から守る最良の一手です。通常テラスには雨水側溝、雨水桝が設置されております。これらを小まめに清掃できるかどうかが水害から身を守る大切な対策となってきます。個人の性格も見極めながら物件を選んでもらうと後悔のない選択になると思います。
技術的な点ですと、各テラスには最低1箇所、雨水桝が設置されております。仮にそこが詰まったとしても隣の住戸に流れる計画となっております。また、建物の雨水対策として東京の物件ですと、地下に雨水貯留槽を設けている場合が多いです。仮に雨水貯留槽が満水になっても一定の水量は建物下ピットに流れる計画をとっておりますので、よっぽどの雨が降らない限り地下住戸に水が到達することはない計画となっております。
4.虫リスクが高くなる
地階に住む際の害虫に関する懸念は大きいですよね。クモ、ゴキブリ、アリ、ハエなどが頻繁に侵入する可能性が高くなります。 加えて、湿気がこもりやすく、これが虫を引き寄せる要素となる上、キッチンやダイニングエリアから漏れる食べ物の匂いが虫を誘引する可能性もあります。気になる方は、出入口周辺に虫よけを散布し、ドアや窓の隙間をしっかり塞ぎ、湿気を抑制する乾燥剤を置くなどの対策が必要です。地階の場合はテラスの側溝及び雨水桝にて虫が繁殖する可能性がありますので日々のメンテナンスを行うようにしましょう。
5.再販する場合、希望価格に届かない場合が高い
一般的に地階は嫌がれるお客様も一定数いらっしゃるので、そもそも人気がないという前提条件がござます。なので販売しても買い手を見つけることが難しくなります。しかし、その価格と住宅空間が気に入りずっと暮らすことを想定しているのであれば、良い選択になると思っております。また、一般的に建築基準法上は地階扱いですが販売上は1階扱いになっていることが多いです。
6.上から物が落下してくる
【落下してくる可能性のあるもの】
- 生活用品: 靴、洗濯物、小物などが窓やバルコニーから落下することがあります。
- ゴミ: 不注意な処分により、ゴミが落ちてくる可能性があります。
- プランターや鉢植え: 高層階のバルコニーでのガーデニングが原因で、植物やプランターが落下するケースがあります。
- 子供のおもちゃ: 上階に住む子供がおもちゃを窓から落とす可能性もあります。
- ペットのアイテム: 上階のペットが食べ物や玩具を窓から落とすことがあります。
- 植栽の落ち葉:雨水側溝、雨水桝の詰まりの原因になります。
結構な頻度で上から落下物があるそうです。管理規約で物を置かない等、決まっておりますが落ちてくるそうです。少しでも落下物を回避するためには手摺の種類を確認することをおすすめします。手摺の形状で考えると、【躯体手摺<ガラス手摺<縦格子】の順番で物が落下してくる可能性がありますので、落下物が気になる方は上階の手摺が躯体手摺の物を選ぶと良いでしょう。また、植栽からの落ち葉には注意が必要になります。地階の生命線である雨水側溝、雨水桝の詰まりの原因になります。
7.メンテナンスの為、業者の立ち入り検査がある
地階住戸はドライエリアがない場合、土を接する部分には二重壁を設置しております。その部分は共用部からメンテナンスすることが基本的にできないので専有部内からメンテナンスを行うことになります。その為、業者の立ち入り検査が実施される場合があります。
メリットについて
続いてメリットの内容を確認していきましょう。
1.販売価格が安い
分譲マンションの地下住戸の販売価格は、上層階に比べてやや価格が安く設定されております。これは地階住戸が持つデメリット(プライバシーが確保しにくい、防犯リスクが高い、虫の侵入が多い、水害の危険性があるなど)が価格に反映されているためです。これらのデメリットを総合的に考慮すると、地下住戸の価格が上層階に比べてやや安く設定されている理由が明確だと思います。購入を検討されている方は、これらを理解した上で、価格とのバランスを考慮して最適な選択をしていきましょう。
2.地上部に比べて静かな住環境
都会の中心に住みながら、静寂を楽しむことができる地下住戸。その魅力は、日常の喧騒から離れ、心地よい時間を過ごすための最適な場所と言えると思います。もし、都会の生活に疲れたら、一度地下住戸の静寂を選択することも良いかもしれません。地下住戸の最大の特徴は、地下に位置していることから自然と防音効果が得られる点です。地上の騒音、車の音、人々の声など、日常のさまざまな音は地下には届きにくい。このため、地下住戸は都会の中心でも静かな環境を保つことができます。体感しましたが地下って静かなんですよね〜。静かな環境を求めている方にはおすすめです。
3.下階に住戸がないので騒音を気にしなくて良い
マンションの地下住戸に住む際の利点として、特筆すべき点があります。それは、下の階に住人がいないため、床に関連する騒音(例:歩行音や家具の移動音)が下階に影響を及ぼさないことです。特に、家庭に小さな子供がいたり、ペットを飼っている場合、このような騒音が頻繁に発生してしまいます。地下住戸に住むことで、これらの騒音による下階への迷惑を気にする必要がなくなり、住人としての心の負担が軽減されます。
さらに、この環境は、隣人間のコミュニケーションを円滑にし、より良好な住み心地を実現する要因ともなります。しかし、このメリットは下の階への影響に限定されるため、上階や隣接する部屋、そして外部からの騒音に対しては、通常のマンションと同じように注意が必要です。それでも、地下住戸は、特定のライフスタイルや家族構成に合わせて、魅力的な選択肢として検討する価値があります。
4.テラスがある
地下住戸のテラスは、周囲の目を気にせずにリラックスできるプライベートな空間としての役割を果たします。都会の真ん中でも、自分だけの静かな場所を持つことができるのは、まさに贅沢と言えます。また、地下のテラスは地下に位置することから、独特の雰囲気を持っています。自然の光が巧妙に取り入れられ、緑の植物が映える空間となっています。このような環境は、日常の喧騒から離れてリフレッシュするのに最適です。テラスは上階からの視線が気になる方がいらっしゃると思います。通常、上階のバルコニー(奥行き約2m)の部分は上階から覗かれることがありませんので、そのスペースに椅子を持ち出しくつろいだり、ご飯を食べたりと地下住戸ならではの時間を過ごすことができます。
5.意外と明るい
多くの人々が地下住戸に対して持つ「暗い」というイメージ。確かに、そのイメージは一部の事実に基づいていますが、私が設計に携わった経験から言うと、その全てが真実ではありません。
まず、廊下側に関しては、採光の面での制約があるため、暗く感じることが確かにあります。しかし、それは地下住戸の一部分に過ぎません。バルコニー側は全く異なる印象でした。ドライエリアが適切に設計されていれば、自然光が豊富に取り込まれ、購入者は「こんなに明るいのか!」と驚くと思います。
さらに、住戸の向きも明るさに大きく影響します。南向きや西向きの住戸は、特に日中の時間帯において、豊富な日光を享受することができます。また、周辺の環境も非常に重要です。高い建物が近くに建っていないか、または将来的に建設予定がないかを確認することで、長期的な明るさを確保することができます。
結論として、地下住戸が一概に暗いというのは誤解です。設計や環境によっては、地上の住戸と変わらない、あるいはそれ以上の明るさを持つ住戸も存在します。もし地下住戸を検討しているなら、その明るさや空間を実際に確認し、最適な選択をすることをおすすめします。
6.共用廊下にエアコンがある場合が多い
私自身が特に感じるメリットの一つとして、地階住戸の共用部について触れたいと思います。多くの地階住戸では、共用廊下部が地階に埋まっているため、内部廊下として設計されています。この内部廊下の最大の利点は、気温や天候の影響を受けにくい快適な空間となっている点です。
特に、エアコンが設置されている場合、夏の暑さや冬の寒さを気にせずに移動することができます。これは、住民の日常の快適性を大きく向上させる要因となります。また、雨や雪の日にも、濡れることなく自宅までたどり着くことができるのは、地階住戸の大きな魅力の一つになります。
さらに、建物全体で上階が外部廊下の設計であっても、地階だけが内部廊下となっていることが珍しくありません。これは、地階の特性を活かした設計の結果であり、住む人々の快適性を追求した結果と言えるでしょう。
もし、新しい住まいを検討している方がいれば、地階住戸の共用部に注目してみてください。その快適さと利便性を実感することができるはずです。
まとめ
地下住戸は、上層階に比べて価格が安く、都会の中心でも静かな環境を享受できる特徴があります。また、下階に住人がいないため、床に関連する騒音を気にする必要がなく、テラスはプライベートなリラックス空間として利用できます。一般的な暗いイメージとは異なり、設計や環境によっては明るい住環境も実現可能です。さらに、共用廊下は内部廊下として設計されており、エアコンが設置されていることが多く、気温や天候の影響を受けずに快適に移動できるのが特徴です。これらの要点を考慮すると、地下住戸は特定のニーズやライフスタイルに合った魅力的な選択肢と言えます。
冒頭にも記載しましたが、
買い替えを考えていない。
ずっと住むことを決めいる。
方には良い物件になる可能性がありますので実際の物件を見学してみることをおすすめします。
素敵な住まいとの出会い探していきましょう。